FF:Uの続編はもう作られないのか?

「FF:U、楽しみに観てました」
「あぁ、ありがとうございます」
「やっぱり難しそうでしょうか、続編は」
「そうですねぇ」
「権利はスクエニさんが?」
「だと思いますけど、あれは製作委員会に色んな人が参加してるんです」
「はい」
「なので、色々な調整が必要で…」
~2013年9月16日「“Pianoschlacht” ベンヤミン・ヌス ピアノリサイタル~浜渦正志作品集~」会場にて、河津秋敏氏

2001年の秋に、『FF:U ~ファイナルファンタジー:アンリミテッド~』(以下「FF:U」)というアニメが放送されていたことをご存知の方は多いかもしれない。
だが、それがどういった経緯で、どのように表舞台からフェードアウトしていったのか、正確に把握されている方はそう多くはないように思う。
一般には映画(Final Fantasy:The Spirits Within)の大失敗による影響、とされているが、
FF:Uの第一期テレビアニメシリーズ(以下、「異界の章」)の終了から10年以上が経過した今、
加速度的に忘れ去られようとしているこの不運な作品について、備忘録も兼ねてもう少し詳しく綴ってみたい。

ちなみに冒頭の会話は、2013年秋に都内で行われた作曲家・浜渦正志さん(元スクウェア・エニックス)の
ピアノコンサート会場にいらっしゃった河津秋敏氏に開演前ロビーで突撃取材したもの。
(突然お声を掛けてしまい、大変失礼をいたしました……)
FF:Uという作品を何らかの形で“復活”させることがいかに難しいか、この会話だけでも感じて頂けると思う。

1. 放送開始

今でこそ触れられることが殆どなくなってしまったが、FF:Uの放映当時はそれなりに盛り上がったように記憶している。
PlayOnlineという壮大な(あるいは大風呂敷を広げすぎた)コンテンツを軸に、
評判はさておき新時代を切り開いた映画や、FF9、FF10、FF11と立て続けに発売されたFFシリーズ本編が存在したあの時代は
まさにスクウェア黄金時代と呼んでも差し支えない、ごく短い間ではあったが、充実した期間だった。
その最中に誕生したFF:Uは、アニメという全く新しい世界に飛び込んだFF(※)がこの先どうなっていくんだろうという
少しの不安と大きな期待に見守られながら、割と華やかに初回の放送を迎えたのである。
(※OVAの二の舞にならなければ良いけど…と心配されていたオールドファンも僅かながら存在しました。結果的にその不安は現実のものとなってしまいましたが)

テレビ東京系列、火曜日の午後6時半。主人公は小学生の双子姉弟。
これまでのFFシリーズとは一線を画し(大きなお兄さんや大きなお姉さんのためのキャラクターも登場するものの)、
基本的には完全にファミリー層を狙った設定である。

異界の章は、新潟県佐渡ヶ島に住むこのハヤカワ家の双子、アイとユウが、突如「異界」へ消えてしまった両親を探す、というストーリーが軸になった。
異界での旅の間、カレシを探しに異界へ向かう(と双子に勘違いされてしまった)中国人とロシア人のハーフの巨乳お姉さんのリサや、
様々な召喚獣を放つ「魔銃(まがん)」を操る寡黙な黒髪イケメンお兄さんの『風』、「ミスト」という不思議な物質を操る銀髪イケメンお兄さんの『雲』のほか
シリーズお馴染みのシドやチョコボ、モーグリなど、古き良きFFシリーズを彷彿とさせる、実に濃い人達が仲間になったりならなかったりしながら
最終回ではついに両親と再会を果たし、それまで両親を洗脳していたラスボスをやっつけてめでたしめでたし、と終わる。

でも、全然めでたくなんかなかった。
ある意味ここで終わってしまっていた方が幸せだったのかもしれない。

2. 打ち切り

そもそも、FF:Uの放映期間は当初一年間(4クール)と発表されていた。
ところが、映画の記録的な興行失敗を受け、スクウェアは映像分野からの完全撤退を決断する。
この決定に巻き込まれる形で、FF:Uは当初の半分、2クールで急遽打ち切られることとなったのである。

余談ではあるが、FF:U第1話の放送日である2001年10月2日に行われた旧スクウェア(以下スクウェア)の02年3月期連結決算発表において
 ・映画ファイナルファンタジーの不振により特別損失を計上すること
 ・映画事業から撤退する意向であること
上記方針の発表があり、更に第2話の放送日である2001年10月9日には、スクウェア、およびソニー・コンピュータエンタテインメント(以下SCEI)両社より
スクウェアの実施する第三者割当増資149億円をSCEIが全額引き受けるとの発表があった。
この149億円は、映画ファイナルファンタジーのスクウェア製作負担費139億円とほぼイコールである。
この時の記者会見で、鈴木尚スクウェア社長(当時)は「ゲームに特化してこなかったことで開発力が落ちている」
「人、物、金が分散し、FFブランドを疲弊させながら来た」「これからはゲームの制作が中心となる、本業回帰を行ないます」
と述べている。

つまり、打ち切られることは放送前から確定的であり、第1話、第2話の時点で既に言外に匂わされていたのである。…余談ここまで。

しかし、アニメ制作スタッフに打ち切りが告げられたのはどうも放送開始後かなりの時間が経過してからだったようで、
あらゆる歪みが異界の章の終盤以降、様々な箇所に発現することとなった。
最終回のあと、アンリミテッドである『風』と『雲』の二人がどうなったのかは不明のまま。
確実に判っているのは、とりあえず双子と両親、そしてリサが無事であることだけ。
付け加えるならば、敵である「ガウディウム四凱将」は、四人のうち二人が存命である。

3. 打ち切り後

それらの食べ残しは、異界の章終了後に展開された「外界の章」、
すなわち、ドラマCD、ムック本掲載の漫画・脚本、および公式サイトに連載されたWeb小説で一部のみではあるが、半ば無理矢理消化された。
異界の章では文字通り「異界」が主な舞台だったが、外界の章の主な舞台は現実世界の日本やロシア、中国、その他世界各国である。
リサがモスクワでカーチェイスやったり、リサのカレシ(本当にいたんです)がマンハッタンでサラリーマンやっていたりする。
双子はロシア奥地の施設に軟禁され、両親とは再び離れ離れになる。
復活した『風』は各国軍隊のミサイル攻撃を受けながらバイカル湖から現れる。召喚獣ナイツオブラウンドはロンドンや香港など世界13か国でモンスターを蹴散らす。
これが超面白い。

広げた風呂敷を畳もうとしてるのかと思いきやまた広げ始めるこの展開に、ファンは一体どのように決着を付けるのか気を揉んでいたが
物語の時系列上、最後にあたるドラマCD(After2)では、結局「俺達の戦いはこれからだ!」というところで終わってしまう。
リサのカレシが混沌に飲み込まれた挙句『風』に撃たれ死んだ以外、敵サイドは未だ健在だし、地球も階層宇宙に取り込まれたままである。

角川スニーカー文庫から発行されたノベライズ「双の絆」にFF:Uのコンダクター・米たにヨシトモ氏が解説を寄せているが
これを読む限り、外界の章はほぼ当初から予定されていたプロットのまま展開されているように思える。
但し打ち切り前後、某アニメ雑誌に、幻となった「テーブル-あなたはだあれ-」の回が手違いで紹介されたり、
公式イラストに混沌王ユウの姿が見られるなど、一部が切り捨てられた痕跡は確実に窺える。
最終的にAfter2でも完結しなかったのは、打ち切りによる異界の章の若干の軌道変更によって、元の軌道に戻ることが出来なかったからと推察する。

異界の章も外界の章も物語としては完結していないが、下手に綺麗に終わってしまっているが故に。
また、続編を企画したところで、十年以上前のアニメの続編に果たしてどれくらいの人がお金を落としてくれるのか
(2001年10月2日に始まったのが『FF:U』ではなく、『FFOVA』の続編だったら、貴方は観ましたか?)、期待出来ないが故に。
冒頭の河津氏のコメントにあるように、複雑に絡み合った権利関係が故に。
故に、このまま静かにフェードアウトしていくのが、恐らくこの作品にとって最も美しい散り方なのだと考える。

…でも、「お前に相応しいソイルは決まった!」が一人歩きしてる現状、せめて『風』くらいは何らかのFFお祭りゲームに出てもいいよなぁ。ディシディアとか…。

4. 制作スタッフのその後

最後に、FF:Uスタッフのその後を簡単に記しておこうと思う。
制作会社であるGONZOは、一部スタッフの独立や会社組織再編を繰り返しつつ、現在もテレビシリーズや劇場版等のアニメを数多く手掛けている。
総監督の前田真宏氏は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の監督のほか、最近ではTBSドラマ『安堂ロイド』にも参加。
コンダクター・米たにヨシトモ氏は『TIGER&BUNNY』シリーズでもお馴染み。
シリーズ構成の冨岡淳広氏は『イナズマイレブン』シリーズのシリーズ構成・脚本や、『ポケットモンスター』シリーズでも大活躍中。
キャラクターデザインを務めたカーメル7の出世頭は岸田隆宏氏。『まどか☆マギカ』シリーズのキャラクターデザインを担当した。
ゼネラルプロデューサーの田中謙介氏(当時スクウェア)は今をときめくブラウザゲーム『艦隊これくしょん~艦これ~』をプロデュース。
ベースコンセプトプランニングの河津秋敏氏は取締役を経て、現在もスクウェア・エニックスでプロデューサー・ディレクターとして活躍中。

こうした方々が活躍されているのを目にするたび、FF:Uという作品があったことを思い出して、嬉しくなり、そして少し切なくなる。
願わくば、このままFF:Uという作品が忘れ去られることなく、いつまでも誰かの心に留まり続けますよう。

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